Vol.53 『ナイル殺人事件』
観賞映画振り返りコラム15回目は1978年公開の『ナイル殺人事件』。アガサ・クリスティの推理小説を豪華な出演者で映画化したミステリー映画。こうしたオールスターキャストの映画、最近はほとんどなくなりましたね。
ナイル川をさかのぼる汽船の中でハネムーン中の資産家令嬢が何者かに殺害される。その汽船に乗り合わせていた名探偵エルキュール・ポアロが捜査を開始するが、乗客はみなその令嬢との間に因縁を持ち、誰もが殺人の動機を持っているのだった……。
クリスティの推理小説は、そのトリックが卑怯であるなどと批判が出る作品がわりとありますが(私も個人的に『カーテン』はちょっと受け入れられない)、この作品についてはまったくの正攻法で、映画も推理物として楽しむことができます。まあ、途中でだいたい犯人がわかってしまうかも知れませんが(^_^;)
この映画はミステリー映画としてだけではなく、エジプトの遺跡を楽しむといった要素もあります。この映画の後に禁止されたピラミッドへの登頂シーンはもう二度と撮れない画です(まあ最近はCGで作ってしまってますが……)。他にも有名な遺跡が数多く登場し、ニーノ・ロータの音楽と合わせてエジプト紀行映像としても秀逸です。
出演者はさきほど書きましたがとても豪華です。ベティ・デービス、ミア・ファロー、アンジェラ・ランズベリー、最近では『ハリー・ポッター』シリーズに出演しているマギー・スミス、『ロミオとジュリエット』のジュリエット役で知られるオリビア・ハッセー、ほかにもデビッド・ニブンやジョージ・ケネディ、ジャック・ウォーデンが出演。殺害される令嬢役は次のボンドガールとなったロイス・チャイルズ。そしてポアロはピーター・ユスチノフが演じていました。
このユスチノフのポアロはまさにはまり役でしたねぇ。『オリエント急行殺人事件』のアルバート・フィニーはポアロにしては外見がちょっとイメージと違っていましたが、ユスチノフのポアロは原作を読んでいるときに想像するイメージにぴったりでした。この後もポアロ物の映画やテレビシリーズではこのユスチノフが演じることになるわけですが、作り手側もイメージ通りだったんでしょうね。
数多くの原作がありながら、映画としてうまく映像化されることが少ないクリスティの推理小説。今作は、その原作の持つ魅力を味わえる映画だと思います。
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コラム, 推理小説・ミステリー映画
2009/09/24 04:10 MOVIEW