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Vol.89 『グリーン・ゾーン』

マット・デイモン物語―ゴールデン・ボーイの素顔完成披露試写にて『グリーン・ゾーン』観賞。観る前は戦争映画だと思っていたのですが、内容としてはサスペンス映画ですね。マット・デイモン主演、ポール・グリーングラス監督。
イラク戦争時、大量破壊兵器を探す部隊を率いるロイ・ミラー。しかし上層部から示される場所を探しても一向に見つからない。そのことに疑問を持ったミラーは、そこに隠された真実を突き止めるために独自に行動を起こす。そしてたどりついた驚くべき秘密とは……。


この映画はもちろんフィクションです。しかし、徹底したリアリティ、登場人物と一緒に戦場を駆け抜けているような揺れる画面、息詰まるような国防総省とCIAの反目……。イラク戦争で、本当にこのようなことがあったのではないかというような錯覚を覚える臨場感がそこにありました。
タイトルになっている“グリーン・ゾーン”というのは、アメリカを中心とする多国籍軍、マスメディアなどが駐留し、イラクの統治・復興作業の指揮などを行っていたバグダッドの中心エリア。その内部にはリゾート地と見間違うような設備が施され、観光気分で記念撮影をする人、プールサイドでアルコール片手にくつろぐ人など、イラクとは思えない光景。
一方、グリーン・ゾーンを一歩出れば、多国籍軍による占領で混乱する人々があふれかえり、崩れ落ちた建物、物陰から狙撃する人、暴徒と化し、略奪する人々、水を求めてアメリカ軍の車両に押し寄せる人々など、まったく違う世界がそこに広がっている。イラク戦争時、そこで何が行われていたのかという現実をまざまざと見せつけられる気分です。
アメリカの思惑とイラクの未来を思うイラク人との確執。戦後の日本がそうだったように、自分たちの価値観を強要するアメリカという国の考え方が本当に正しいのか? アメリカ人がそこで行ったことは本当に正義であったのか? この映画を観ると、ベトナム戦争と同様に、このイラク戦争の意味が問われているのだと感じます。
イラクだけでなく、中東の問題は様々な人種、宗教、宗派が入り乱れており、一つの価値観で推し量れたり、解決したりするものではないことはこれまでの歴史でも証明されています。アメリカがフセイン政権を打倒して新しいイラク政権をそのグリーン・ゾーン内で樹立するシーンが出てきますが、最初から議場は紛糾。それぞれの立場でそれぞれが主張を行い、議論はまったくの平行線。
これとまったく同じ光景が、第一次世界大戦を描いた『アラビアのロレンス』の中でも出てきます。西洋人の考えでは解決しない問題がそこにはあるのだと再認識させられるシーンでした。
映画としてはそういったメッセージを押しつけるわけではなく、あくまでも主軸は大量破壊兵器の存在をめぐるサスペンスアクションで、エンターテインメント作品として楽しめますが、観終わった後、ふと物思いにふけってしまう、そういうテイストを持った作品です。
『グリーン・ゾーン』は5月14日からTOHOシネマズスカラ座ほかにて全国ロードショーされます。
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