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『幕末太陽傳 デジタル修復版』公開記念 立川談幸師匠による“居残り佐平次”

日活創立100周年記念特別上映作品『幕末太陽傳 デジタル修復版』公開記念イベント「立川談幸師匠による“居残り佐平次”」が12月12日江戸東京博物館 中村座にて行われました。
ゲスト:立川談幸 12:00~13:00
場所:江戸東京博物館(東京都墨田区)常設展示室 中村座前にて
演目:“居残り佐平次”
『幕末太陽傳』の主人公の名前は、佐平次。当映画は、古典落語の「居残り佐平次」や更に「品川心中」「三枚起請」など数々の噺を一本の物語に紡ぎ上げた作品であり、多くの落語家が「落語種を映画にして唯一成功した作品」との太鼓判を捺し、喜劇を生業とする様々なジャンルの文化人たちに愛され続けている川島雄三監督の代表作です。
立川談幸師匠は、故・立川談志師匠の唯一の内弟子。談志師匠が愛し、彼が得意とした“居残り佐平次”は、映画の軸になっている噺のひとつでもあります。当映画も談志師匠が大好きな作品で、映画祭のゲストで語ったこともあるほどでした。
“居残り佐平次”を、彼の唯一の内弟子である、談志師匠への思いをこめて、談幸師匠に演じていただきました。


●立川談幸師匠のお話
江戸時代を舞台にした映画『幕末太陽傳』というものがあるが、落語が10席ほど話に組み込まれている。映画を見てから落語をお聞きになるのも良いかと思います。1957年の映画ということで、フィルムが劣化しているが、デジタル修復化ができたとのこと、このたび日活が配給するとのことです。
「廓話」イコール艶っぽい話と取られるが、この映画は性描写も出てこないし、廓話は欲望も含め人間のすべてが出る。例えば、左幸子と南田洋子の喧嘩のシーンなど、人間模様が表れやすいというところが面白いと思う。
作品の素晴らしさもさることながら、役者もすごい。それぞれの個性を上手く発揮している。若い人にとってはそれが新鮮に映ると思う。談志師匠もこの作品は大好きでした。
談志師匠は“佐平次”に自分の気持ちを投影させて、“佐平次”のどこでも自分の才覚で生き抜いているバイタリティのあるところを気に入っていると思うし、師匠の持ち味でもあると思う。さらに、志ん朝師匠の流麗な話し振りから学び、両者の良いところ(居残り佐平次)取りをさせていただいた。
今改めて思う談志師匠の魅力は、落語というものは昔から型を重んじるものであって、型破りは評価されてこなかった中で、それをやって評価されている。今、風俗を含め江戸がわからなくなっているので、(型を重んじるよりも)人間を描くということに重きを置いている。伝統のある中で、それを過去完了に終わらせないというところが魅力だ。また人の気持ちをつかむのも上手。
師匠がお亡くなりになってからの心境については、実感がわかない。亡くなる知らせを受ける前、ちょくちょく談志師匠が夢に出てきていた。それが亡くなった知らせを聞いた23日以降、めっきり出なくなった。でも、昨夜、今日自分が「居残り佐平次」を演ずるにあたってなのか、夢に出てきた。「俺、これから死ぬんだ」と言っていた。会ったのは8月が最後、筆談で放送では言えないことを書いていた(笑)。あれが最後だとは思っていなかったけど、今でも心の整理はつきにくい。
師匠は舐めかけのアメを小袋に入れてとっていたとTVで見たけれど、師匠は何でも大切にとっていた。楽屋にある食べ物などすべて持って帰っていたし、宴会の席のものもタッパに入れて持って帰っていた。縁があって来たんだから、大切にしようという想いだと思う。それは物でも人でも何に対しても言えたと思う。
●『幕末太陽傳 デジタル修復版』
ここでしか観ることができない、豪華キャストの競演!
半世紀の時を超えて、銀幕に甦る!!
時は幕末、文久2(1862)年。品川の地に北の吉原と並び称される岡場所があった。
相模屋という遊郭へわらじを脱いだ主人公の佐平次は、勘定を気にする仲間三人を尻目に、呑めや歌えの大尽騒ぎ。実はこの男、懐に一銭も持ち合わせていないのだが・・・。
“居残り”と称して、相模屋で働くことにした佐平次は八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍!
巻き起こる騒動を片っ端から片付けてゆく。自らの身に起こった困難をものともせず、滞在中の高杉晋作らとも交友を結び、乱世を軽やかに渡り歩くのだった。
来る2012年に100周年を迎える日本最古の映画会社である日活。
数多あるライブラリーの中から、後の100年まで残したい1本として、日活および川島雄三監督の代表作である本作をデジタル修復する作品に選んだ。
撮影当時のスタッフが修復に携わることで、日本映画黄金期の勢いを感じさせる作品として生まれ変わった本作は、50年代のオールスター・キャストが織りなす、笑いあり涙ありの江戸の“粋”な心に触れる作品だ。
古典落語「居残り佐平次」を軸に、「品川心中」「三枚起請」など様々な噺を一本の物語に紡ぎ上げ、完成して54年、日本文化に多大なる影響を齎し続けている。
出演:フランキー堺、南田洋子、左幸子、石原裕次郎、芦川いづみ、金子信雄、織田政雄、岡田真澄、植村謙二郎、河野秋武、二谷英明、西村晃、高原駿雄、小林旭、武藤章生、小沢昭一、梅野泰靖、新井麗子、菅井きん、山岡久乃/殿山泰司/市村俊幸
監督:川島雄三
脚本:川島雄三、田中啓一、今村昌平
撮影:高村倉太郎
照明:大西美津男
美術:中村公彦、千葉一彦
録音:橋本文雄
音楽:黛敏郎
修復監修:橋本文雄、萩原泉
共同事業:東京国立近代美術館フィルムセンター
技術協力:IMAGICA、IMAGICAウェスト、AUDIO MECHANICS
1957年/110分/モノクロ/スタンダード/©日活
配給:日活
『幕末太陽傳 デジタル修復版』
12月23日(金・祝) テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
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